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Channel: 理系のシゴトバ –就職ジャーナル
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株式会社パロマ

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今回の訪問先 【パロマ 技術開発部】
コンロや給湯設備などのガス機器は、私たちの生活に欠かせない熱源として重要な役割を担っています。創業以来、ガス機器を通して人々に貢献したいという志を持って技術開発に取り組み、主力製品のガスコンロをはじめ、ガス給湯器、ガス湯沸かし器、ガス炊飯器などの提供を行ってきました。パロマの理念でもありこだわりは、製品の開発・製造・販売・サービス活動を通じて、お客さまの安全、安心で快適な生活の向上に貢献すること。その理念が浸透しているからこそ、現在の業界のスタンダードともなった不完全燃焼防止装置や高効率な省エネ技術の開発など、使う人のことを考えた安全機能や環境に配慮した製品をいち早く生み出してきたのです。最近では太陽熱を補助熱源とした給湯システムなど、次世代エネルギーを活用した製品の開発にも注力。限りある資源の有効利用と地球環境の保護についても、先進的な取り組みを行っています。いまや北米やオセアニアにも生産拠点を構え、世界各国に安心、安全で快適なガス器具を提供しているパロマ。今回はガス器具の設計・開発を行っている技術開発部のシゴトバを訪れました。

 

商品開発の川上から川下まですべての工程に携わる

技術開発部は、名古屋市瑞穂区のパロマ本社ビル内にあります。最寄り駅は地下鉄または名鉄の堀田駅。名古屋駅から堀田駅までは名鉄を約10分。堀田駅から5分ほど歩けば本社に着きます。東海道や名古屋高速3号大高線など、交通が発達していることもあり、周囲は工場や事務所などが立ち並んでいました。

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技術開発部のシゴトバを紹介してくれたのは、技術開発部厨房2グループ マネージャーの益満(ますみつ)孝久さんです。
「ここ技術開発部でパロマが提供しているすべての製品の設計、開発を行っています。技術開発部は厨房グループと温水グループの2つの部署で構成。また燃焼など要素の研究は札幌研究所で行っています」(益満さん)
写真は益満さんが主担当として携わったテーブルコンロ(写真左)とビルトインコンロ。いずれの商品も安全性には徹底的にこだわっているのだそう。
「例えば右のビルトインコンロは、100万分の1の確率で起こるかもしれないようなガス漏れを防ぐための安全装置を備えているんです。これは私たちが何よりも安全性にこだわっていることの表れです。もちろんデザイン性や使い勝手などにも、こだわった開発を行っています。一方、左のテーブルコンロは、2014年年初に出した新製品で、オートグリル機能(魚の形状・焼き加減を設定すると、自動で焼き上げる機能)を付加し、調理性を向上しました。また色味にゴールドを採用していることも特長です。近年、家電製品などでゴールドを採用しているモノが人気を集めていることから、私たちも最上機種にゴールドを採用することにしました。イメージ通りの色を出すために、開発の主担当だった私は何度も生産技術部の表面塗装担当者と打ち合わせをしたんですよ。いかにして塗装のバラツキを抑え、目的の色に近づけるかという議論を何度も繰り返してできたのが、この製品です」(益満さん)

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パロマでは企画の段階から開発者も参画し、商品開発を進めていくそうです。
「営業部門主体で行われる商品企画の会議に、私たち開発メンバーも参加。どのようなマーケットの人たちに対してどのような商品を短期的、中長期的に提供していくか、話し合います。だから開発者はそこで決まったストーリーを基に開発を行っていくのです。CADで設計図面を描くのはもちろん、部品の試作、評価を行います。また部品の品質保証のための評価項目の設計も担当。商品の設計には、工場での組み立てやすさ、さらには購入後のメンテナンス性の良さも考慮しなければならないため、製造部門や地域のガス販売店などから情報を仕入れることも行います。このように私たちはモノづくりの最初から最後まで携わることができるんです。そこが当社の強みとなっていると思います」(益満さん)
写真は自席でデザインレビュー用の資料を作成しているところです。デザインレビューとは設計案を営業や製造部門など立場の違う人たちにチェックしてもらう機会のこと。
「マネージャーという立場なので、最近は図面を描くよりも、資料作りをする時間が増えましたね。商品開発プロジェクトでは製品企画段階、設計構想段階、試作後という節目ごとにデザインレビューが行われるのですが、そのための資料を作ったりしています。開発においてはどんな検討をして最終的にその商品に至ったのか、その足跡を資料として残すことも大事なことだからです」(益満さん)

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写真は設計レビューの様子です。設計担当者が前に立ち、現在の開発成果を営業部門や製造部門など、ほかの部署の人たちにプレゼンテーションします。
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部品の試作ができれば、ちゃんと設計したとおりの寸法になっているか、ノギスを使ってチェックします。写真はトッププレート(テーブルコンロの天板)を固定するための部品をノギスで測っているところ。
「テーブルコンロやビルトインコンロは200個以上の部品で構成されています。しかしその多くは共通化されています。ガス器具には高い安全性が求められるため、すでに安全性に実績のある部品を使うことで安定した安全性を提供できるからです。このような測量は、試作品が上がってきたときだけではなく、量産化後に問題が発生したときに、原因追究のためにも一つひとつの部品を検証するために行ったりします」(益満さん)

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現在のガスコンロにはさまざまな電子部品が搭載されています。それがちゃんと機能しているかはテスターでチェックします。写真はその準備をしているところ。
「ガスコンロの製品寿命は長く、10年以上使う人がざらにいます。長く使われる製品だけに、品質の念入りなチェックは欠かせません」(益満さん)

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「ガスコンロの開発の方向性は2つあります」と益満さん。
「一つはデザイン性の追求です。ガスコンロもいまや家具の一部として見られるようになりました。世の中のトレンドを取り入れながら、お客さまが求めるデザイン、色を提供していくこと。2つめは調理性や手入れのしやすさを突き詰めていくこと。そのために私たちは社内モニターに使ってもらうことに加え、ひたすら調理する試験を実施したりしています。調理は社員の中からランダムで選んでいます。このように数値化できない調理性や手入れのしやすさといった事柄については、実際に試してもらうことで、本当に調理しやすいか、手入れしやすいかを評価してもらいます。その結果も設計に反映するんです」(益満さん)
写真は調理試験の様子。

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開発者は企画から量産に至るまでの一連の流れに携わるため、打ち合わせの機会も多々あります。
「商品の開発担当になると、営業部門や製造部門、試験室、デザインチーム、要素開発チームなどさまざまな部門の人たちとコミュニケーションして、プロジェクトを進めていきます。また営業に同行してキッチンメーカーなどに出向くこともあるんですよ。コミュニケーション能力は欠かせません」(益満さん)

 

ハタラクヒト 生活密着しているから、お客さまの声がダイレクトに届く

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引き続き益満さんに「パロマ 技術開発部」というシゴトバの魅力、やりがい、職場の雰囲気などについてお話をうかがいました。

 

益満さんは2006年に名古屋工業大学 機械工学科を卒業し、パロマに入社しました。
「コンシューマー向けのモノづくりをしたかったんです。愛知県でコンシューマー向けのモノづくりというと自動車が第一に思い浮かぶかもしれませんが、私は自動車にはあまり興味がありませんでした。そんな私が、毎日、通学時に目にしていたのがパロマの看板。パロマがつくっているのはガスコンロや給湯器という生活に密着した製品です。ここでならコンシューマー向け、しかもお客さまの声が直接届くようなモノづくりができる。そう思いパロマを選びました」

 

入社後、技術開発部に配属され、2~3年、小型湯沸かし器の開発に従事。その後、さまざまなガスコンロの開発に携わってきました。
「ガスコンロの開発で面白いのは、お客さまの声が聞こえてくるところ。聞こえてくる声の中には良いものも悪いものもある。悪い評価が聞こえてくると、多少落ち込みますが、しかしそれは次の開発のヒントとなる。また生活密着商品だけに、自分ならどうしたいかという発想もわきやすい。私たち開発者は成果が製品という形となるので、大きな達成感が得られます。楽しいですね」

 

とはいえ、「任されるということは大きな責任も伴います。日々、大変なことは目白押しです」という益満さん。どのような大変さがあるのでしょうか。
「例えば量産間際に不具合や改良点が見つかったときは本当に大変です。以前、こんなことがありました。量産間際に営業から『コンロに貼るシールを変更したい』と言われたのです。シールを貼り替えるとなると、当然、製造工程にも変更が生じます。このときは関連部署の方に協力してもらい、なんとか量産に間に合わせることができました。日ごろのコミュニケーションが大切だとあらためて感じました」

 

益満さんが学生時代に専攻していたのは、機械工学。ガス器具の開発というと機械系のイメージが強いかもしれませんが、同社技術開発部では機械系をはじめ、化学系、材料系、物理系などさまざまな理系出身者が活躍しているとのこと。
「社内教育がしっかりしているので、学生時代の専門にこだわる必要はありません。むしろ重要なのはコミュニケーション力。私たち開発者は他部署と調整する機会が多々あります。憎まれ役になることもある。そんなときでも、うまく仕事を進めるには日ごろからいろいろな人とコミュニケーションを取って、信頼関係を築くことです。就業中だけでなく、終業後、飲みに行ったりして打ち解けるように心がけています。部活に入ったり、長期旅行に出かけたりなど、学生時代からいろんな人とコミュニケーションする機会を設けておくといいと思います」

 

パロマという会社の文化、風土について聞いてみました。
「パロマでは私のように30代でマネージャーを務めるなど、若い人が活躍できる環境です。それを可能にしているのが、ベテランの方々のサポート。何か困ったことがあるとすぐ、相談することができます。上下関係はもちろんありますが、非常にフラットな雰囲気なので、話しやすいんです。またチャレンジに対して寛容なのもいいところ。伸び伸びと働けるシゴトバです」

 

社員の活力を生む食堂

食堂です。毎日、3種類のメニューが用意されているそうです。
「定食、丼もの、麺類の3種類から選ぶことができるんです。安くておいしいのでほとんどの人がここでお昼を食べています」(人事部 人事・広報グループの高橋卓良さん)
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食堂の隅には畳を敷いた小上がり(床より一段高くなった、靴を脱いで上がる座敷)があります。そこには囲碁や将棋の道具が…。
「お昼休みにちょっとくつろぐためのスペースです。食堂には小上がりのほか、卓球台も設置。社員がリフレッシュできる空間へと改善中です」(高橋さん)

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パロマにまつわる3つの数字

創業以来、ガスコンロ、ガス給湯器、ガス湯沸かし器、ガス炊飯器などのガス器具を国内外に提供してきたパロマ。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1. 1911年
2. 約11.9本
3. 60カ国以上

 

前回(Vol.107 株式会社オートテクニックジャパン)の解答はこちら

 

取材・文/中村仁美 撮影/早川俊昭

 


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