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Channel: 理系のシゴトバ –就職ジャーナル
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スガツネ工業株式会社

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今回の訪問先 【スガツネ工業 技術設計部】
私たちの身の回りにある製品には、さまざまな部品が使われています。金物製品もその一つ。例えば玄関ドア。ドアの開閉に欠かせないヒンジ(ちょうつがい)やハンドル、安全を守る錠前。このように玄関ドアは金物製品がなければ、ドアとして機能することはできないのです。金物製品の用途はこのような建築金物や家具金物だけではありません。折り畳み式携帯電話をはじめとする通信機器やOA機器、電気機器、アミューズメント機器など幅広い分野に活用されています。そんな金物製品を開発・設計・製造し、幅広い分野に提供することで、業界をリードしているのがスガツネ工業です。スガツネ工業の最大の強みは創業以来培ってきた技術力。例えば温水洗浄器付きトイレの便座やフタがちょっとした力を加えるだけで静かにすーっと閉まるのは、実はスガツネ工業のオリジナル「ラプコン」というダンパー(衝撃や振動の振幅を軽減する装置)を採用しているからです。ラプコンは温水洗浄器付きトイレのほか、システムキッチンの収納扉や壁面に収納できるベッドなど、国内外のさまざまな製品に応用されています。また折り畳み式携帯電話や携帯ゲーム機のディスプレーとキーパッドのジョイント部分には、複数の特許技術がつまった同社のマイクロヒンジが使われていたり…。今回はそんな金物製品の業界をリードしているスガツネ工業 技術設計部のシゴトバを訪れました。

 

家具金物・建築金物を開発・設計する仕事とは

スガツネ工業 技術設計部のシゴトバがあるのは、東京都千代田区岩本町。最寄り駅は都営新宿線岩本町駅もしくはJR総武線快速の馬喰町(ばくろちょう)駅。そこから徒歩7~8分ぐらいで、技術設計部の入っているビル(5号館)に着きます。またJR秋葉原駅へも徒歩圏内(10分)と通勤が便利な場所にあります。この周辺には本社ビルのほか、同社のビルが5棟あるとのこと。そのうちの一つが先の技術設計部の入っている5号館です。
オフィスの周辺一帯は少し下町風情が残る商業地となっており、飲食店も多く、「仕事帰りに一杯」の時もお店探しに困ることはありません。

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技術設計部のシゴトバを紹介してくれたのは、技術設計部の吉井元輝(もとき)さん。
「技術設計部は建築金物や家具金物、産業機器用部品など、当社製品の開発・設計を行う部署です。実は製品の開発・設計を手がけているのはここだけではありません。千葉工場と京都製品開発課でも行われています。ただ、拠点で担当している製品に違いがあります。千葉工場で担当しているのは、ダンパーなどの要素開発と規模の大きな大量生産の製品。そして京都が担当しているのは主に関西地区のメーカー向けのOEM(他社ブランドの製品を製造すること)製品です。東京の技術設計部では、多品種小ロット生産や開発スピードが要求される製品を主に担当しています」(吉井さん)
写真は技術設計部の執務フロア。奥には技術資料が並んだ棚が設置されていました。

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「現在、私が主に担当しているのは建築金物や家具金物の開発・設計です。2カ月間の新人研修ののちにこの部署に配属され、1年目の終わりごろから新商品の開発案件を任されるようになりました。入社3年目の今では任される案件数もかなり増えましたね」(吉井さん)
新商品の開発案件では、製品の企画から設計、試作、検証、量産までというモノ作りの一連のフローに携わることになります。
「当社では年に一度、全国の営業所からアイデアを募り、それを数回に及ぶ会議でふるいにかけて最終的に選び抜かれたものが開発テーマとなります。開発テーマには漠然としたモノもあるので、私たち開発者が頭を使ってそれを実用レベルに落とし込んでいくのです」(吉井さん)
写真は2013年にグッドデザイン賞(日本デザイン振興会が主催する「よいデザイン」に対する顕彰制度)を受賞したキャスター(写真右)の改良版を、3次元CADで設計しているところ。
「デザインをそのままにより良い製品となるよう、コストや強度、機能追加などを企画検討するんです」(吉井さん)

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CADで設計図面ができると、3Dプリンターにデータを送り、試作を行います。
「CADの画面では実寸大の大きさで表示することはありません。大概は拡大して表示しています。そのため、丸みを付けたと思っていても、実寸にすると思ったほど丸みがなかったり、場合によってはとがっていたりすることもあります。従来は試作メーカーに試作品を作ってもらうのに数日間要しましたが、今は3Dプリンターがあるので、翌日には造形試作ができ、外観の確認検証ができるようになりました。開発のスピードが非常に上がりました」(吉井さん)

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またスガツネ工業では3Dスキャンも導入しており、試作品や製品の検証のスピードアップも図っています。
「試作品をこのスキャナにかけるだけで、設計したとおりの寸法になっているか、あっという間に測定することができるんです。ノギスで必要な箇所を必要な個数、測定する必要がなくなったので、検証スピードと精度が一気に上がりました。当社のような中堅の企業でこのような最先端機器を導入しているところはなかなか少ないと思います」(吉井さん)

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吉井さんが開発・設計し、15年6月より販売された角度調整棚受けです(板の端に取り付けられている白い樹脂が開発した製品)。
「従来の角度調整棚受けは、棚板の厚みに制約がありました。これはその制約をなくし、かつ耐荷重も上げ、また棚受けの位置を目で確認しなくても取り付けられるようにしています。最終的な形になるまでに、かなり試行錯誤をしました」(吉井さん)

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角度調整棚受けを実際に棚に取り付けているところ。アパレルショップや靴店などで商品を展示するのに用いられる製品です。

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技術設計部ではさまざまな製品の開発が行われています。写真は建築金物の大型フックです。建築金物の場合、機能性だけでなく、デザイン性も重要になります。開発者にはデザイン力も問われます。

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「最近は『デスクトップマルチタップ』という天板に埋め込む新しいタイプのテーブルタップ(延長コードが付いたコンセントの差し込み口。電源タップとも言う)の開発にも取り組んでいます」と吉井さん。写真はすでに商品化されているもの。デスクトップマルチタップの場合、敷設に電気工事士の資格が必要なものと、誰でも取り付けられるものでは当然、設計が変わってきます。
「どんなところにどんな人が取り付け、どんな人が使うモノなのか、そして見た目もどう美しく仕上げるか、検討して設計するんです。街中でテーブルタップを見つけると、どんなふうになっているか、ついつい見入ってしまいます(笑)」(吉井さん)

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写真は同社のオリジナルのダンパー機構「ラプコン」を採用したシステムキッチンの収納扉です(開けたところ)。「ラプコン」を採用すると、扉が閉まる際は手を離してもゆっくり閉まるように。つまり扉の開閉が安全かつ楽にできるようになります。

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ハタラクヒト 一人ひとりの成長をちゃんと見てくれるのがうれしい

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吉井さんに「スガツネ工業 技術設計部」というシゴトバの魅力、やりがい、職場の雰囲気についてうかがいました。

 

吉井さんは千葉工業大学工学部機械サイエンス学科を13年に卒業し、スガツネ工業に入社しました。
「学生時代の専攻は先端材料工学。スガツネ工業との出合いは、大学で毎年開催されているOB・OG会社説明会です。携帯電話に使われるマイクロヒンジの説明をされていたのですが、その気持ちがこもった説明を聴き、製品への愛着のすごさを感じました。マイクロヒンジは本当に小さな製品です。そんな小さなモノにもこれだけ熱い思いが込められているんだなと感動し、この会社で働いてみたいと思いました」

 

2カ月間の研修ののち、希望通り現在の部署に配属された吉井さん。
「私は学生時代、材料を専攻していたため、CADを使ったことがなかったのです。最初はCADに慣れることや図面の描き方のルールなどを覚えることから始まりました。技術設計部では機械工学系の出身者が多いのですが、私のように材料系などそれ以外の学科出身者もいます。また最近、プロダクトデザイン学科の出身者も増えています。理系の職場としては比較的女性比率も高いと思います」

 

CADでの設計に慣れ、1年目の終わりから、製品の企画から携わる開発案件を担当するようになったそうです。
「一番やりがいを感じる瞬間は自分が一から考えたモノが形となり、量産化され、市場に出た時ですね。ただ、私が一から担当した商品はまだ市場に出たばかりなので、まだ実際に使われているシーンは見ていないんです。実際に使われている場面を見ると、きっと感動すると思います。今からワクワクしています」

 

若手のうちから製品開発を任されるのはやりがいがあるけれど、大変なこともたくさんある、と吉井さんは言います。
「自分の考えたアイデアが実際に製造するとコストがすごくかかる設計になっていたり、製造技術を無視したモノとなっていたことがありました。こうした自分の想像やイメージと現実とのギャップを埋めるのには、勉強が不可欠です。暇があれば、実際に使われているシーンを見に行ったり、展示会に足を運んだりしています。また製造技術であればインターネットで文献を検索したり、専門書で調べたり。樹脂製品なら樹脂の、金属製品なら金属のそれぞれの製造ノウハウがあるので、調べることは膨大です。しかも幅広い製品を扱っているので、勉強に終わりはありません。そこが大変なところでもあり、新しい知識が獲得できるという意味では面白さとも言えます」

 

スガツネ工業の文化・風土について聞いてみました。
「当社は長い歴史があります。そのため伝統を重んじる雰囲気がありますが、社員一人ひとりの成長をよく見てくれているなと実感しています。例えば入社1年目で開発案件を任せてくれるのも、成長を見ていてくれるからだと思うんです。もちろん先輩や上司がサポートしてくれますが、1年目で企画から任せてくれるところはそうないと思います。成長するチャンスにあふれたシゴトバです」

 

社員旅行では離れた拠点の社員とも交流できる

東京ショールームの外観です。ここではスガツネ工業で取り扱っている多くの商品が展示されています。吉井さんもよく訪れるそうです。
「実物を確認したいときはもちろんですが、ショールームの上階に営業部門が入っているので、試作を見せに行ったりしています」(吉井さん)

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スガツネ工業では2~3年に1回の割合で、社員旅行を実施しています。写真は14年10月に甲府(山梨県)に行った時のひとコマ。
「記念の年(5周年や10周年など)には全社一斉に旅行することがあります。日ごろ、顔を合わせない拠点のメンバーと交流を持てるよい機会となっています」(吉井さん)

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スガツネ工業にまつわる3つの数字

創業以来、家具金物や建築金物、産業機器用金物の開発・設計に取り組み、グローバルに提供しているスガツネ工業。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1. 0(ゼロ)

2. 30000点

3. 3000件

 

前回(Vol.134 ジャパン マリンユナイテッド株式会社)の解答はこちら

 

取材・文/中村仁美 撮影/臼田尚史


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