【本社場所】東京都墨田区
【工場】野洲(滋賀県)、成田(千葉県)計2カ所
【営業所】東京、大阪、名古屋ほか、計13カ所
【従業員数】702人(2016年3月31日時点)
【事業内容】特殊鋼・超硬合金などによるチップ、切削工具の製造および販売
「開発技術の三菱日立ツール」というキャッチフレーズが表す通り、独自の技術で「尖った」切削工具を開発し続けている。その注力度合いは、モノづくり日本会議と日刊工業新聞社が主催する「“超”モノづくり部品大賞」を13年連続受賞していることでもうかがえる。ちなみに16年は「高能率仕上加工用刃先交換式異形工具シリーズ」が、「“超”モノづくり部品大賞 機械部品賞」を受賞。そのほかにも日本機械工具工業会 技術功績賞を受賞するなど、数々の表彰実績を持つ。
三菱日立ツール株式会社の会社概要・沿革
家電製品や電子機器、自動車、電車、航空機…。私たちの身の回りにはさまざまなモノがあります。これらの形あるモノをつくる過程において、切削加工は欠かせない技術です。三菱日立ツールは1928年の創業以来、独自の技術で工具の開発、製造、販売を行っています(創業当時の社名は帝国カッター製作所。87年に商号を日立ツールに変更。2015年に三菱マテリアルの子会社となり、現在の社名に変更)。
前編では【三菱日立ツール株式会社 成田工場 開発技術部】のシゴトバを紹介しました。
後編では、同部に所属する稲垣史彦さんに入社の経緯や決め手、会社の魅力などをお話ししていただきます。
<後編>「三菱日立ツール株式会社」で活躍する社員にインタビュー
-学生時代の専攻を教えてください
三重大学工学部物理工学科ナノデザイン研究室に所属し、元素や原子、量子エネルギーに関するシミュレーションの研究に取り組んでいました。いわゆる計算材料科学という分野で、この分野を直接生かせる就職先はあまりありません。そのため、私以外の研究室のメンバーのほとんどが大学院に進学しました。私はどうせ未経験で就職するのなら、学部で就職した方がよりチャンスが広がると思い、大学院進学を選びませんでした。
-就活中の企業選びで大切にしていたことと、入社の決め手を3つ教えてください
1.雰囲気の良さ
2.しっかりとした教育システム
3.全体を見渡せるぐらいの企業規模
企業選びで大切にしていたことは3つあります。第1にその会社の持つ雰囲気です。例えばストレスを感じる場所ではないか、人や会社の雰囲気を確かめました。第2にしっかりとした教育システムがあることです。私はどの会社に就職しても未経験からのスタートとなります。そんな未経験者でも大事に育ててくれる環境かどうかについては重視しました。第3は会社の規模です。あまりにも大きすぎると、全体を見ることができません。会社がどんなことをやっているか、全体が見えるぐらいの規模のモノづくりの会社を中心に企業選びをしました。
私は機械を触ることが好きなので、モノづくりの中でも機械系メーカーや工具系メーカーに絞って就活し、先の3つの条件を満たしていたのが三菱日立ツール(当時の社名は日立ツール)でした。
いろいろな会社の工場見学に行きましたが、当社の工場は活気があって、働いている人たちが格好良く見えました。本当に雰囲気が良かったんです。また入社3年間は、何でも相談できる先輩が一人ついてくれるブラザー・シスター制度も整備されているので、未経験でも安心して業務に取り組めると思いました。社員数も700人程度ですので、「全体が見える」会社規模です。
そのほかにも日立ツールへの入社の決め手となったことがありました。それは開発している製品です。当社の主戦力はオリジナル製品で、毎年、そのようなオリジナル製品を生み出す体力も有しています。その技術開発に注力している姿勢にもひかれ、入社を決めました。
-入社してから感じる三菱日立ツールの魅力は?
顧客満足度はもちろん大事にしていますが、それを向上させるためにも、従業員満足度の向上を優先して考えてくれているところです。先輩や上司はもちろんですが、役職がかなり上の方でも、相談すれば、親身に話を聞いてくれます。そういう人の良さだけではなく、働く環境をより良くしようという取り組みも積極的に行っています。私は安全衛生委員を務めていますが、常に職場を快適に改善するような施策の検討に努めています。また職場環境だけではなく、従業員の慰労を兼ねて、毎年ビアパーティーを開催したり、また家族向けには工場見学を年1回実施したりしているのもその一つです。
次に開発にかける意気込みのすごさです。だからこそ、13年連続で「“超”モノづくり部品大賞」が受賞できるのでしょう。就活の時も、同大賞を受賞していることから、技術力の高さを魅力に感じていましたが、開発にかける意気込みがこれほどまでとは思いませんでした。お客さまにとって付加価値の高いオリジナル製品を開発する苦労はありますが、自分たちの開発力が会社を支えているんだという技術者ならではの醍醐味が得られます。
第3に開発メンバーも営業と共にお客さまのところにうかがい、どんなところが困っていたり、課題を感じているのか、ヒアリングなどができることです。お客さまの声を直接聞くことができるのも、いいところだと思います。ドイツの子会社に技術営業として赴任していた3年半は、ヨーロッパのいろいろなお客さまの声を聞くことができました。お客さまがどんなものを求めているかを知ることができたので、今でも大きな財産になっています。
-成田工場 開発技術部で必要とされるスキル・知識はありますか?
切削工具の開発技術は超硬素材技術、コーティング技術、形状技術で成り立っています。これらの開発に取り組むため、学生時代の専攻で多いのは機械工学系や材料工学系です。また、海外にもお客さまがいるので、語学の知識もあるといいでしょう。
とはいえ、私のような理系の知識はあるものの、機械系や材料系の知識のない未経験者でもちゃんとやっていける土壌が当社にはあります。ですので、特に求められるスキルや知識があるかというとそうではありません。それよりも重要なのはチャレンジ精神です。当社が手がけているのは標準的な切削工具ではなく、オリジナルな切削工具。そのため新しいことに常にチャレンジしていくんだという意識が必要になります。
-入社を目指す学生さんへアドバイス
就職活動では皆さん、インターネットや四季報などの書籍を見たりして情報収集をすると思います。しかしそれらの情報を鵜呑み(うのみ)にするのではなく、気になった会社があるのであれば、できる限り足を運んで自分の目で確かめてみること。そして実際に感じた印象を整理することをお勧めします。私もいろんな会社の工場見学に参加しました。その時にどんな人がどんな様子で働いているのか、それをチェックすることで会社の雰囲気を知ることができました。これは外からの情報だけではわからないことです。社会人になると、1日の大半を会社で過ごします。そんな大半の時間をストレスなく過ごすには、会社の雰囲気を知ることは非常に大事。ぜひ、足を運ぶことをいとわないでほしいですね。
従業員も訪問客も笑顔になる取り組み
成田工場では「全員が力を合わせれば『無限の力』が生まれる」を合言葉に、DREAMプロジェクトを立ち上げて取り組んでいます。「笑顔化プロジェクト」もその一つで、これは従業員とお客さまを笑顔にするためのプロジェクトです。写真は成田工場を訪れたお客さまに手渡されるお土産です。
「左側は当社の製品カタログをパッケージに採用したお菓子で、銀色の小袋の中には非常に硬いですが、おいしいサブレーが入っています。当社のインサートは非常に硬いモノを切削できるので、それをイメージできるよう地元のお菓子屋さんに頼んで作ってもらいました。右側はコースターで、こちらもインサートの形状にしています。これらお土産も笑顔化プロジェクトメンバーが一から考えました」(稲垣さん)
そのほかにも、訪問時に必ず、お客さまと一緒に写真を撮り、でき上がった写真を渡すということも行っています。取材スタッフも頂き、笑顔いっぱいの取材時間となりました。
16年夏に開催されたサマーフェスタでのひとコマです。同社では毎年夏と冬にビアパーティーを開催しており、夏に開催のビアパーティーをサマーフェスタと呼んでいます。今回のサマーフェスタではマジックショーやバンドのライブ、ビンゴ大会などさまざまな出し物などが披露され、大いに盛り上がりました。また16年のサマーフェスタは従業員およびその家族、取引先の方も参加し、イベントを楽しんだそうです。
取材・文/中村仁美 撮影/臼田尚史