PUFをはじめ「ふくらむモノ作り」を追求する「東洋クオリティワン」のシゴトバ紹介
【本社所在地】埼玉県川越市
【国内事業所】東京事務所(東京都文京区)、東京車両営業所(埼玉県川越市)、東京化成品営業所(埼玉県川越市)、名古屋営業所(愛知県みよし市)、大阪営業所(大阪市)、福岡営業所(福岡市)
【従業員数】355名(2017年10月現在)
【事業内容】ポリウレタンフォーム(PUF)・アスファルトフォーム・プラスチックフォームなどの各種フォーム、フォーム加工製品(自動車用部品・内装材、産業資材、工業資材、建築・建設資材、生活関連用品など)の製造・販売。およびこれらの生産システムや機械設備の設計・開発を手掛けている。
1935年に設立されて以降、PUFはじめとする「ふくらませる化学」を一筋に追求してきたフォーム総合メーカー。柔軟で感触の良い性質を持っている軟質PUFは自動車のシートやベッドのマットレスのクッション材、エアコンのパッキン部分、住宅の断熱材など、日常、私たちが目にするさまざまなものの素材として使われている。素材としての可能性の広さから、同社では300種類もの製品を実用化している。新素材の開発にも積極的に取り組んでおり、吸放湿性に優れたモノなど、高機能なPUFを開発提供し続けている。中国やインドネシア、タイ、メキシコなど生産拠点を海外にも積極的に展開し、グローバルなお客さまのニーズにも適切に対応できる生産体制を構築している。
東洋クオリティワンの会社概要・沿革
「この車のシートは座り心地が良いな」「このベッドは寝心地が良いな」など、日常でこんなふうに感じたことはありませんか。このような「快適さ」を提供する素材として使われているのがPUFです。そして、PUFをはじめとするフォームおよびその加工製品など、いわゆる「ふくらむモノ作り」を一貫して手掛けているのが東洋クオリティワンです。
同社が設立されたのは1935年(当時の社名は東洋護謨化学工業。1991年に現在の社名に変更)。翌年には、丸系ゴムおよびフォームラバー(気泡を多く含んだスポンジ状のゴム。座席や寝具などに用いられている)の製造を開始。そして1961年にはPUFの製造を開始するため、現在の本社所在地である川越市に川越工場を建設し、翌1962年から大量生産を開始します。2004年より海外にも積極的に進出し、中国、インドネシア、タイ、メキシコに子会社を設立、生産を行っています。東洋クオリティワンのミッションは新しい素材を開発して、PUFの可能性を広げていくこと。本社のある川越工場には研究施設が併設されており、お客さまのニーズに合ったより高機能なPUFの開発が行われています。
技術部 製品開発課のシゴトバ紹介
今回は東洋クオリティワン 技術部 製品開発課のシゴトバを紹介します。
技術部 製品開発課のシゴトバは川越工場にあります。最寄り駅は東武東上線の鶴ヶ島駅。駅から川越工場までは約3キロメートルあるため、社用バスが出ていますが、多くの社員は自家用車や自転車、バイクで通勤しています。
川越工場のある下小坂地区は、6~7世紀の古墳が多く見つかっている場所で、川越工場が新設される際も多数の土器や埴輪(はにわ)、勾玉(まがたま)などが出土したそうです。それらの出土品は同社製品と共にショールームに陳列されています。
技術部 製品開発課のシゴトバではどんな仕事をしているの?
技術部 製品開発課 係長の熊木文秀さんが案内しくれました。
「技術部 製品開発課が担当しているのは、スラブ発泡という方法で作るPUFの新商品開発です」(熊木さん)
スラブ発泡とは、コンベヤーと連動したシートの上に、ウレタンの原料となる反応液を流し、連続して発泡させるという方法です。自動車のシートクッションのカバー材やマットレス用などに使われるのは1つのロットが長さ60メートル、幅が1~2メートル、高さが0.3~1メートルの長尺タイプです。それを裁断加工して使用します。用途によっては、長さ2メートル程度の短尺タイプを製造することもあります。
PUFにはもう一つ、モールド発泡という作り方があります。こちらはプラスチックや金属の型(モールド)に反応液を入れて発泡させるという方法で、自動車や鉄道などのシートクッションなど、長尺のタイプから切り出すことが難しい複雑な形状のPUFを作るのに向いています。
技術部には熊木さんが所属する製品開発課以外に、自動車用モールド製品の開発および生産技術を担当している課、化成品の開発および生産技術を担当している課、ゴム系製品の開発、および生産技術を担当している課、製品の品質改善と不具合の原因調査を担当する課、各種プラントの機械設備の設計・開発や生産システムの開発・改良をしている課などで構成されています。
「うちの部署の平均年齢は30代前半。人数は15人と少数精鋭の組織なので、若手のうちから責任ある開発テーマを担当します。仕事の進め方もそれぞれに任されています。1カ月を単位としたフレックスタイム制が導入されているので、例えば午後に会議で詰まっている日は午後からの出勤にして会議だけで帰宅し、翌日は定時より1~2時間早めに出勤し、定時過ぎまで働くなどして前日の足りなかった勤務時間を調整したりしています。時間のかかる実験業務が多い私たちにはすごくフィットした働き方です。仕事の状況次第に合わせて、効率的に働けるようになっています」(熊木さん)
技術部 製品開発課 熊木文秀さんのおシゴト紹介
熊木さんが担当しているテーマは「自動車用高耐熱仕様のウレタンフォームの開発」です。
「私は当部署の係長なので、後輩のテーマをサポートする役割も担っているため、担当するテーマは1つですが、後輩の中には大きいテーマと小さなテーマというように、複数のテーマを抱えている者もいます。大きなテーマの中には、2~3人で取り組むものもあります」(熊木さん)
新製品の開発は、お客さまから『こういう性能のモノを』と依頼されるだけではなく、『こういうモノを作ればこういうお客さまに喜んでいただけるのでは』という同社発信の2パターンがあります。
いずれのパターンにおいても、まずはどういう性能や機能を有しているPUFを作るか、目標を立てるところから始まります。
「これまでの性能を有しながら、より重量の軽いものを開発する」といった目標を定めます。次に物性を考慮しながら、その目標を実現する原料を選定します。そして実験室で実際に発泡させて試作品を作り、求める物性が出ているのかを確認します。物性が出ていない場合は、原料を変更したり、追加したりして発泡させ、また評価を行います。こうして目的のモノが作れるまで、試作を何回も繰り返します。目標とする物性が得られたら、実際に生産ができるか、工場現場での試作を行います。最終的に新製品として量産するかどうかの判断は、営業や生産技術、製造現場の責任者、品質保証などの各分野の担当者が集まり、会議を行います。そこで評価を得られたものが、新製品として市場に出ていくのです。新製品として世に出た後もお客さまのご要望により改良することもあります。また競合の製品の物性を調べる、というようなことも行います。
「実験室や分析室で過ごすことが多いですね。モノによっては量産化のところまで担当することもありますが、多くは量産化に至るまでが私たちの役割。もちろん、生産が始まって何か問題が発生することもなくはありません。その場合は、現場に出向くこともあります」(熊木さん)
PUFの新製品開発という仕事でやりがいを感じる瞬間は、「お客さまから『こんな物性のモノ、今までになかったよね』と言われた時」と熊木さんは言います。東洋クオリティワンでは、技術的な説明をするために開発者も営業担当者に同行することが一般的で、直接、お客さまの声を聞くことができるのです。
また自分が作ったモノが身近なところに使われていることも面白さだと言います。
「私たちが開発しているモノは最終製品ではありませんが、自動車のシートやベッドのマットレスなど、身近なモノに使われています。自分が開発したモノに触れられる機会があるのも、面白さだと思います」(熊木さん)
前編では【東洋クオリティワン 技術部 製品開発課】のシゴトバを紹介しました。
後編では熊木さんに入社の決め手やシゴトバの魅力、これから就活を迎える学生さんへのアドバイスなど、お話しいただきます。
→次回へ続く
(後編 11月8日更新予定)
取材・文/中村仁美 撮影/臼田尚史