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Channel: 理系のシゴトバ –就職ジャーナル
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<前編>【理想科学工業株式会社】シゴトバ紹介

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高速プリンターを開発する「理想科学工業」のシゴトバ紹介

-基本情報-
【本社所在地】東京都港区
【営業拠点※】札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡ほか14営業部45支店
【製造拠点※】筑波、霞ヶ浦(以上茨城県稲敷郡)、宇部(山口県宇部市)、タイ(アユタヤ)、中国(シンセン)
【開発拠点】理想開発センター(茨城県つくば市)
【従業員数※】1716名(グループ全体3604名)
【連結子会社※】28社(国内2社・海外26社)
【事業内容】高速カラープリンター「オルフィス」、デジタル印刷機「リソグラフ」、インク、マスター(版)などの消耗品の開発、製造、販売、メンテナンスまでを一貫して手掛けている。
※2017年3月31日現在
-理想科学工業のすごいトコロ-
理想科学工業の開発ポリシーは「世界に類のないものを創る」。このポリシーにのっとり、高速カラープリンター「オルフィス」を2003年に開発。独自開発した油性顔料インクを使用し、1枚当たり2円以下というモノクロ出力並みのコストで、フルカラー印刷を実現している。また長年培った高速用紙搬送技術により、最新機種「オルフィスGD9630/GD9631」は、世界最速を更新(同社調べ※)、経済性に優れた高速カラープリンターとして高い評価を受けている。

※2017年6月時点における枚葉(カット紙)オフィス用カラープリンター(A4普通紙紙面横送り、標準設定連続プリント、GDフェイスダウン廃止トレー使用時)の場合

理想科学工業の会社概要・沿革

終戦翌年の1946年、「日本がどうなるか分からない時だから、人は理想を失ってはいけない。どんな時も理想を貫いていこう」という思いを社名に冠し、謄写版(ガリ版)印刷業「理想社」として創業しました。印刷業として次々に仕事を増やしていくものの、当時インクは英国から輸入しており、船便が遅れるたびに供給不足に悩まされました。そこで1954年、日本初のエマルジョンインク「RISOインク」を開発。これを契機に、理想科学は印刷業から「類のないものを創る」印刷機材メーカーへの第一歩を踏み出したのです。

 

現在は、サプライ品メーカーからプリンターメーカーへ業容を変化。「世界に類のないものを創る」という開発ポリシーの下、インク開発技術、高速用紙搬送技術、印刷プロセス最適化技術という3つのコア技術を武器に、さまざまな独自製品・サービスを開発・提供しています。主力製品のデジタル印刷機「リソグラフ」、高速カラープリンター「オルフィス」は、世界180以上の国や地域の企業、官公庁、学校などで幅広く活用されています。

 

また、同社の強みは技術だけではありません。製品の企画から開発、製造、販売、メンテナンス、リサイクルに至るまでのバリューチェーンを1社で実現していることも、競争力となっています。

 

開発本部 R&Iセンターのシゴトバ紹介

今回は、理想科学工業 開発本部 R&Iセンターのシゴトバを紹介します。
開発本部 R&Iセンターのシゴトバは、茨城県つくば市にあります。最寄り駅は、首都圏新都市鉄道つくばエクスプレスの研究学園駅。5分ほど歩くと、開発本部が入っている建物、理想開発センターに到着。理想科学工業が持つ技術、および製品の開発が行われています。
建物の前には研究学園駅前公園が広がっており、非常に開放的な環境の中にあります。

 

開発本部 R&Iセンターのシゴトバではどんな仕事をしているの?

開発本部 R&Iセンターの武本和大さんがシゴトバを案内してくれました。

 

開発本部はR&I(Research & Innovation Center)とP&D(Product & Design Center)という2つのセンターで構成されており、前者では主に新規開発に係わる先行開発、後者では既存製品にかかわる量産開発を担当しています。
「R&Iセンターも複数の部署で構成されています。その中で、私の所属する部署が担当するのは、新規事業に向けた製品開発。これまでに培ったインク開発の技術や、高速用紙搬送技術を生かした製品の企画検討からモノをつくり、事業化に結び付けるまでを担当します」(武本さん)

 

NB開発部は、機械設計を行うグループ、電気や制御ソフト開発を行うグループに分かれており、各グループのメンバーが集まってプロジェクトを組み、製品の開発を行っていきます。
まずはどんなプリンターを作るか、企画の担当者と相談します。次に大まかな仕様を決めて、実際にモノづくりができるよう詳細設計に落とし込んでいきます。
「いくつかのプロジェクトが進行していますが、私が所属しているプロジェクトでは、理想科学では初となる印刷会社などに導入される産業用途向けのフルカラーインクジェットプリンターの開発を行っています」(武本さん)

 

同製品は数年後を目指して開発中ですが、コンセプトモデルは2016年6月にドイツ・デュッセルドルフで開催された世界最大級の印刷総合見本市「drupa 2016」で披露されました。同社製品の特長は大きく2つ。産業用としては小型で軽量、省スペース性に優れていること。そして、シンプルな構造をしているので、操作性とメンテナンス性に優れていることだそうです。武本さんも同展示会に赴き、ブースを訪れるお客さまに直接説明を行ったそうです。

 

開発本部 R&Iセンター 武本和大さんのおシゴト紹介

 

現在、武本さんは産業用途向けフルカラーインクジェットプリンター開発のプロジェクトに携わっています。その中で担当しているのは、用紙搬送技術の機械設計です。
「当社では、オフィス向けの高速インクジェットプリンターの技術を応用して産業用途向けの開発も手掛けています。オフィス向けプリンターのコンパクトな設計を、どのようにして産業用向けに生かせるのか。さらに生産性を高めた高速用紙搬送技術が実現できるか、手探り状態で開発を進めました」(武本さん)

 

武本さんが入社からこれまで手掛けてきたのは、オフィス向けのインクジェットプリンターの用紙搬送技術の機械設計。オフィス向けプリンターの場合、搬送する紙はA4やA3などのカット用紙。一方、産業用途向けのプリンターが搬送するのはロール紙です。
「同じ用紙搬送技術でもカット紙とロール紙ではまったく機構が異なります。しかもこれまで3年間、担当していたのは、既存機種の改良設計。一方、今回はこれまで当社が手掛けてこなかったプリンターの新たな開発です。これまでに当社で培ってきた高速用紙搬送技術を応用しながらも、いかにしてコンパクトな産業用プリンターとしてのロール紙での高速搬送技術を新たに確立するか。『世界に類のないもの』を考えることは難しいチャレンジですが楽しいですね」(武本さん)

 

武本さんの担当は用紙搬送技術の機械設計ですが、パソコンに向かっている設計だけをしているわけではありません。目指した性能を有しているかシミュレーションを行ったり、設計の周辺業務の要素検討や試作品の組み立て、実験評価を行ったり、最終的にモノとして仕上げていくまでをすべて自分たちで担当していきます。その過程で同じプロジェクトメンバーの電気設計やソフトウェア開発、インクなどの材料開発の担当者とお互い歩み寄り、擦り合わせをしていかなければなりません。
「電気設計やソフト開発の担当者たちとも頻繁にやりとりをするので、それらの知識を身につけていくこともできます。それも当社で新製品開発に携わる醍醐味(だいごみ)だと思います」(武本さん)

 

日々の業務の中でやりがいを感じる瞬間は、「提案した設計方法が認められ、採用された時」と武本さんは言います。最も記憶に残っているのが入社3年目の時に携わった、ある既存機種の搬送性能の改善でした。搬送ローラーの素材を検討するところから始めることになり、材料メーカーとやりとりして、ようやく「これが良い」と思うローラーの材料が見つかりました。そこで改善案を提案したところ、その案が受け入れられたのだそうです。「当初は自分が提案した方法が受け入れられたうれしさよりも、本当に製品として市場に出て行っても大丈夫なのかドキドキしました」と言う武本さんですが、お客さまからも良い評判だったそうです。

 

現在、かかわっている製品が世に出て行くのはまだ先ですが、以前の部署で機械設計に携わったオフィス向けプリンターが世に出て行った時は「すごくうれしかったですね」と武本さん。そのうちの一つがオフィスに導入しやすいコンパクトサイズで展開している「オルフィスFWシリーズ』です。
同シリーズはインクカートリッジ、機器本体の回収・リサイクルを推進し、国際エネルギースタープログラムの標準消費電力量の基準を大幅にクリア。また認定基準の策定当初は適合が難しいとされていたVOC(揮発性有機化合物)などの放散に関する基準値も達成するなど、製品性能と環境性能を両立する継続的な努力が高く評価され、「エコマークアワード2016」を受賞しました。

 

前編では【理想科学工業 開発本部 R&Iセンター】のシゴトバを紹介しました。
後編では武本さんに入社の決め手やシゴトバの魅力、これから就活を迎える学生さんへのアドバイスなど、お話しいただきます。

次回へ続く

(後編 12月6日更新予定)

取材・文/中村仁美 撮影/刑部友康


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